CROSSTALK
秋山哲哉(GRILLZ JEWELZ代表) × 川村健一(KEBOZオーナー) × 草ヶ谷駿(mita sneakersプレス)
東京 東エリアにショップを構える三者が思うスニーカーへの魅力を語る
12月16日にNIKEからリリースされたダンクとエアフォース1の発売を記念して、ミタスニーカーズのPRを務める草ヶ谷駿が、東京 東エリアにショップを構えるGRILLZ JEWELZ代表の秋山哲哉氏と、KEBOZオーナーの川村健一氏にインタビュー。それぞれの持つスニーカー観について語ってもらった。
Photo_Yutto
Text&Edit_Kosuke Kuroki
秋山哲哉 (GRILLZ JEWELZ代表)
上野御徒町のジュエリーショップ「GRILLZ JEWEZLZ」代表。ジュエリーの工房職人を経て独立後、独学でグリルやオーダーメイドジュエリーの制作を開始。ヒップホップカルチャーを語る上で欠かすことのできないアイテムであるグリルを日本に定着させたパイオニア的存在。国内外を問わず様々なヒッポホップアーティストからも絶大な支持を得ている。
川村健一 (KEBOZオーナー)
1992年、北海道旭川市出身。蔵前のアパレルショップ「KEBOZ」オーナー。大学卒業を機に上京し、広告代理店に勤務する傍ら独学で洋服を作り始める。その後、高校時代の野球部仲間である門前伸之介氏と共に「居酒屋 旭一&KEBOZ」をオープン。「着たい服を作る」をコンセプトに自身のルーツである野球や音楽、映画からインスパイアされたオリジナルウェアを制作している。
草ヶ谷駿 (mita sneakersプレス)
1994年、静岡県静岡市出身。ヴィンテージから国内外のスニーカーショップに至るまで様々なショップに恵まれていた地元の影響でスニーカーに興味を持つようになり、地元企業を3年勤めた後に2015年からミタスニーカーズのショップ店員として勤務。2020年からPRを担当。
ー世代の違う三者が語る東京 東エリアの魅力
草ヶ谷:今日は集まっていただいてありがとうございます。改めて自己紹介をしていただけますか?
秋山:GRILLZ JEWELZのオーナーでオーダーメイドでグリルをメインに制作するジュエリー屋をやっています秋山哲哉です。海外のアーティストがグリルやゴールドチェーンを身につけるカルチャーに興味があって、以前は宝石の職人をやっていました。当時はグリルを取り扱うお店が日本には無くて、独学で作り始めたのがキッカケです。
川村:KEBOZのオーナー、川村健一です。今年で5年目になるんですけど、昔からSUPREMEを中心としたストリートブランドがすごく好きでした。ただ人気が高く買えないことも多かったので、それなら自分で作ってみようと思ったのがきっかけです。自分で手刷り印刷機を購入して始めていくうちにどんどんハマっていきましたね。当時は普通に広告会社で会社員をやりながら、ポップアップを開催して徐々に知ってくれる人が増えた感じですね。
草ヶ谷:秋山さんのお店は御徒町にありますが、なぜ御徒町を選ばれたんですか?
秋山:当時のB-BOYはみんな渋谷の宇田川町にお店をオープンするっていうのが多かったんですよ。本当は自分もそこでやりたかったんですが、御徒町は昔から宝飾の街だった背景があり、若い子向けのショップが全然無かったんです。そんな状況だったので、お店を出すならむしろ御徒町の方が面白いかなと思って選びました。
川村:資材とかを仕入れるにしても近場で済んでしまうのはこの地域ならではかもしれないですね。
秋山:そうですね。ジュエリーを制作する上で理想的な場所だと思います。ウチで取り扱っているのはグリルだけではなく、リングやネックレスも取り扱っているので、宝飾品の材料を見つけるのには最適なんです。
草ヶ谷:問屋街であるからこそっていうメリットはありますよね。
秋山:逆に問屋街だからこそ、これを作りたいっていう目的をもったお客さんが多いように感じます。それも御徒町に構えて良かった理由の1つかもしれないです。
草ヶ谷:KEBOZには実店舗が無かったと思いますが、店舗を構えようと思った理由はなぜなんですか。
川村:友達が遊びに来れる空間が欲しかったので、最初は1階が居酒屋で2階を服屋にして、服を見に来た後に1階の居酒屋で飯が食えれば最高だよね!っていう勢いで作っちゃいましたね。
草ヶ谷:今だと商品を手にとって買える機会や、コミュニケーションを取れる環境が少なくなってきているように思いますが、川村さんにとってお店という場所は重要ですか?
川村:お店の価値はとても大きいですね。オンラインは便利だけど、店で買うことの重要性の方が大事だと思うんです。僕が高校生とか大学生ぐらいの頃ってお店に行って、スタッフの人と仲良くなって服を買うことが多かったので、そういうコミュニケーションの中で服を買う経験が大きかったですし、楽しかったですね。そういう商品ほど愛着が湧くので手元にずっと残っていることが多いですから。
草ヶ谷:スタッフさんからしか聞けない話もお店に通う目的のひとつになりますよね。スタッフさんの足元や格好を当時よく参考にしたり、真似したりするのも楽しかったですよね、違う時はちゃんと教えてくれましたし(笑)。
川村:そうですね(笑)。そこでリアルな情報を得ることができると思ってます。
秋山:蔵前がお洒落な街っていうイメージに変わってきたタイミングと、KEBOZがお店を出した時期が近いと感じたんだけど何か狙いがあったの?
川村:蔵前はお洒落な街のイメージはありましたが、服屋のイメージは無かったのであえてそこでできたら面白いなと思ったのが1番ですね。あと余談ですが実は僕の相方の名前が門前っていう名前なんですけど、門前、蔵前で名前が似てるなって。それで酒屋と服屋でやりたいっていう話をしてた矢先にちょうど一軒空いてたので、ここにしちゃいました。居酒屋の間を通って服屋に行くなんてスタイルは珍しいじゃないですか、なので夜もおかしな状況になってますね。おじさんが飲んでる後ろを若い子が通っていくみたいな。
草ヶ谷:飲んでる人も服を見に行けるんですか?
川村:もちろん見に行けますよ。酔っ払っていると財布のヒモが緩みがちな印象です(笑)。
ーそれぞれのスニーカー観について
草ヶ谷:僕の場合はスニーカーを買った際に必ずシューレースを通し直して自分好みに変えているんですが、普段からスニーカーを好んで履くお2人が選ぶこだわりやルーティンなどはありますか?
秋山:2つあって、ひとつは直感で良いなと思ったものを買うことですね。もうひとつは、多くの人たちを惹きつけるコラボレーションや、ハイプと呼ばれるスニーカーには、なぜ多くの人たちが興味を引くのかを自分のなかで知りたくて買うようにしています。
川村:僕はカラーで選ぶことが多いかもしれないですね。このカラーにこの服着たいなみたいな色合わせで買うことが特に多いですね。
草ヶ谷:トップスを選んでから足元を選ぶっていうコーディネートの方が多いですか?
川村:そうですね。例えば今日のトップスはブルーとオレンジなんですけど、それに合うようにエアフォース1のオールホワイトを選んで全体のバランスを整えたりしてます。
草ヶ谷:秋山さんも色で選んでいるイメージがあります。
秋山:そうですね。古い感覚かもしれないですが、キャップとスニーカーの色を合わせるのが結構好きですね。
川村:今回発売されるダンクハイは秋山さんのスタイルにばっちりハマりそうですね。
秋山:どのカラーを拾って合わせようか楽しませてくれる1足だよね。
草ヶ谷:僕がスニーカーに興味を持ち始めた頃は、エアフォース1 LOW オールホワイトを周りで履いている人が多くて、人と被りたくなかったのと、エアフォース1 MIDの発売が自分の生まれた年で親和性も感じてMIDを買っていました。お2人が初めて買ったダンクやエアフォース1は覚えていますか?
川村:それこそ中学3年生の時にナイキ IDが出始めて。自分のお小遣いでIDを作ったのが1番最初のダンクですかね。
草ヶ谷:最初に購入したスニーカーが川村さんがデザインをした1足だったんですね。
川村:その頃から自分でデザインすることが自然と好きだったのかもしれないです。
草ヶ谷:秋山さんはエアフォース1に思い入れとかありますか?
秋山:エアフォース1もそうですし、他にも欲しいモデルは沢山あったんですけど、若いときはお金が追いついてこなくて(笑)。だから悩んで中古を買う方が圧倒的に多かったですね。それもあってエアフォース1は憧れの1足というイメージが強いですが、いつか新品を悩まずに買えるようになろうと思っていました。そういった精神は好きなブラックカルチャーの影響を受けているかもしれませんね。
川村:エアフォース1はフレッシュに履くというか、汚さずに履きたいっていうのはありますね。自分はクタクタのフォース1をずっと履いていたのですが、ラッパーがいつも真っ白なスニーカー履いているのは羨ましかったです。
秋山:当時はDr.Dreのスニーカークローゼットを真似してエアフォース1のオールホワイトを買い直した記憶があるね。
川村:世の中の白で1番カッコイイ気がする(笑)。NELLYのPVで、エアフォース1を持っているのが当時はすごく印象的でしたね。
草ヶ谷:ミニマルなカラーや汎用性の高さを好むファッション視点で履いている人とカルチャー視点で履いている人とでは履き方によって同じスニーカーでも見え方が変わるところがエアフォース1の魅力の1つだと感じます。それこそ、大学のカレッジカラーとして発売されたダンクもその耐久性の高さからスポーツの枠を超えてスケーターからも支持を集めて、ストリートで大きな存在感を示しましたよね。それが後のNIKE SBに繋がるんですが、若い世代の人たちには2000年代以降のダンクSBのイメージが強いのかなって感じています。
秋山:世代によっても見え方が変わるのもスニーカーならではだよね。僕だとダンクはハイカットのイメージが強いかな。
草ヶ谷:ちなみにハイカットとローカット、どちらが好みかって分かれると思うんですが、好きなカットの高さはありますか?
秋山:ハーフパンツを履く機会が多いので、そういうときにはハイカットの着用率が自然と増えますよね。どちらも好みなんですが、それぞれ見え方が違うのでコーディネートに合わせてバリエーションを変えていますね。
川村:僕もそのスニーカーの表情やデザイン次第ですね。足元を強調したい時とかはローカットには出せないボリューム感を求めてしまうので。
草ヶ谷:カットの高さ以外にも昨今ではメンズモデルだけでなく、ウィメンズモデルと言われるモデルの発売数も増えているんです。実は今回発売されるモデルも全てウィメンズモデルなんです。
秋山:ウィメンズモデルだと女性向けってことなのかな?
草ヶ谷:名前だけ聞くとレディースモデルに見えがちなんですけど、メンズライクなデザインや素材使いのモデルも増えてるんです。レディースサイズも含んでいる認識に近いというか。逆にレディースモデルだとポップなカラーが女の子過ぎて履けないっていう声もあるくらいなので、今回発売されるモデルもウィメンズなんですけど履きたいと思う女の子も多いと思いますし、もちろんメンズサイズも対応してます。
秋山:そうなんだ。僕みたいに直感で良いと思ったカラーが実はウィメンズモデルだったなんて事もあるかもしれないね。
草ヶ谷:ジェンダーの隔たりが無くなればスニーカー選びも更に楽しくなりますよね。
川村:女性のお客さんでもメンズライクの服装にダンクやエアフォース1を好んで合わせてる人が多いイメージなので今回のモデルはコーディネートの幅を広げてくれそうですね。
草ヶ谷:今回発売されるダンクについて何ですけど、僕は現代解釈版のWHAT THE DUNKに感じました。
秋山:確かに過去に発売されていたモデルに似ているかも。
草ヶ谷:当時のWHAT THE DUNKはレイヤーごとにカラーパーツを変更していたんですけど、今回のモデルはOFF-WHITEシリーズにみられるカット&ペーストの要素や、sacaiシリーズにみられる異なるモデルを組み合わせて無駄な部分を排除したトレース要素も感じさせます。イノベイティブなモデルをこれまで数多く開発してきたブランドのフィロソフィーがこの1足に集約されてるように感じます。
秋山:エアフォース1にもカッティングが見てとれるね。
川村:その部分に当時買いたくても買えなかった温故知新とサクラのエアフォース1が採用されてますよね。雑誌でしか見たことがない憧れの1足です。
草ヶ谷:余談になってしまうんですが、当時サクラのエアフォース1は上野公園の桜の開花宣言が発売日だったらしく、連日「桜は開花したのか」の問い合わせが鳴り止まなかったみたいで…。
川村:当時人気だったのは知っていたけどその話は初めて聞いたよ(笑)。
草ヶ谷:エアフォース1が生産終了になったタイミングでボルチモア地区の3店舗限定で再生産され、エアフォース1の人気を陰で支え続けてきた地区があるんですよ。25周年の企画の投票でその地区で1位になったのがサクラのエアフォース1だったんです。エアフォース1の魅力を理解していた地区からも認められた1足なのかなと思います。サクラ以外にも温故知新のディテールが反映されていて、温故知新はレイヤーごとにパーツで異なる年代を表現しています。それって今では当たり前になったクレイジーパターンの元祖な気がしていて、サクラのエアフォース1の製品版も実はサンプル版と同じワンピース仕様なんですよね。
秋山:1枚革のアッパーに更に上からステッチを縫っているってことかな?
草ヶ谷:そうなんです。当時最先端の技術を駆使して誕生した2つのモデルが選ばれている事を、ミタスニーカーズで働いてる身として光栄に思います。
川村:このタイミングで当時最新の技術を駆使したモデルのマテリアルが現代のテクノロジーを使って新しいモデルに反映されてると思うと改めてすごいなと感じます。
草ヶ谷:最後にお2人の今後の動きについて、もしあれば教えてください。
川村:地元の旭川と名古屋と福岡の3箇所でお店をオープンします。旭川が来年の1月で、福岡が今年の12月10日、名古屋は1月末ですね。旭川の路面店に関しては蔵前の3倍ぐらいの大きさかつ3階建てで、1階が居酒屋で2階が服屋そして3階をバーにしようかなと思っているので楽しみにしててください。
秋山:それはまたお洒落な場所を作ろうとしてるね。
草ヶ谷:秋山さんはいかがですか?
秋山:こうして健一くんとも知り合えて仲良くさせてもらっているし、上野とか浅草、御徒町とかでも潰れちゃったり閉めてしまった店も多いじゃないですか。そういう意味でも台東区方面がもっと盛り上がればいいなと思う。なのでこういう企画に呼んでくれたのはすごい嬉しいですね。